デニムのベルトループに重厚なチェーンが揺れるスタイル。
ウォレットチェーンは今でも日本のバイカーや古着好きの間で根強く愛されている。
けれど、ふと海外へ行った時の事を思い出してみると、
「つけているのって、だいたい日本人だけじゃないか?」
若い層や女性に「おじさんっぽいとかヤンキーっぽいって言われるの、なんでだろう?」
今回は、そんなウォレットチェーンにまつわる日本特有の文化的背景、そしてなぜ海外では広まらないのかを深掘りしてみたい。
さらに、「今、大人がつけるならどうすべきか」という視点でも話していく。
日本で生まれたファッションとしてのウォレットチェーン

もともとウォレットチェーンは、アメリカのバイカーたちが「財布を落とさないため」に使っていた実用品だった。
ライディング中の振動で財布を落とすのを防ぐため、チェーンで腰に固定していた。それが原点。
しかし、この実用的なアイテムが日本に渡ると、意味が少し変わった。
90年代後半、Levi’s 501、Dickies 874、Red Wing、Schottといったアメカジスタイルが爆発的に流行。
そこに裏原カルチャーやストリートの波が重なり、「見せるためのウォレットチェーン」が誕生した。
渋谷・原宿の若者たちは、アメリカのワークスタイルを自分たちなりに再構築。
古着のデニムにチェーンをつけ、長財布をバックポケットに突っ込む。それが当時の通な男の証だったと思う。
なぜ日本人の一部の人はウォレットチェーンを好むのか?
この文化が日本に根付いた理由は、日本人特有のディテールへのこだわりにある。
① 細部に意味を見出す美意識
欧米人が全体のバランスを重視するのに対し、日本人はパーツや経年変化に美しさを見出す。
シルバーがくすみ、革が馴染む。そんな変化を味と感じるのが日本的感性なんじゃないか。
ウォレットチェーンもただの金属ではなく、「自分の生き方を映す道具」として受け入れられた。
② アメカジ再構築の文化
アメリカの「日常着」を文化にまで昇華したのが日本人。
Levi’sやChampionが「当時モノ」として神格化されたように、ウォレットチェーンもバイカーの道具からスタイルの一部へと昇華した。
③ ショップ文化の影響
90年代からの古着屋。どの店にもウォレットチェーン付きのレザーウォレットが並んでいた。
チェーンをつける=ファッションをわかってる人という認識が定着し、当時は若者たちの憧れとなった。
なぜウォレットチェーンに「ヤンキー」「不良」のイメージがあるのか?

ここからが本題だ。
ウォレットチェーンはカッコいい反面、どこか「ヤンキーっぽい」「おじさんくさい」と言われることもある。
その理由は、文化と時代の交差点にある。
① バイカースタイル=アウトローの象徴だった
アメリカのバイカー文化は、「自由」「反骨」「アウトロー」の象徴。
日本にそれが入ってきたとき、当時の不良文化と結びついた。
漫画『クローズ』や『ワースト』などの影響もあり、
「革ジャン+チェーン=ワル」という構図が生まれたんだと思う。
つまり、自由を象徴するアイテムが、日本では規律に逆らう男の記号に変わったのだ。
② 視覚的な威圧感
金属の光沢、歩くたびに鳴る音。
ウォレットチェーンには、自然と「強さ」や「存在感」が宿る。
それが時代によっては威嚇的にも映った。
90年代〜2000年代のストリートでは、「怖く見られたい」男子たちが好んでチェーンをジャラつかせていた。
結果、「威圧系ファッション」=ヤンキー風というイメージが定着してしまったんだと僕は思う。
③ ドラマ・メディアの影響
『ごくせん』『ROOKIES』『クローズZERO』など、学園不良モノのドラマでは必ずといっていいほどウォレットチェーンが登場した。
その結果、「不良=ウォレットチェーン」というイメージが一般層にも強く刷り込まれた。
メディアがつくった記号化の力は大きい。
「おじさんのアイテム」と言われる理由

ウォレットチェーンが、おじさんくさいと言われるようになったのは、単純に世代交代が進んだから。
90年代〜2000年代にチェーンを愛用していた世代が、そのまま年を重ねた。
だから今の若い世代から見れば、「昔の人のファッション」に見える。
さらに、当時のデザイン。
太くてゴツいチェーンと長財布がそのまま残っていると、どうしても時代遅れ感が出てしまう。
つまり、今の若い子達からすると時代遅れ=ダサい。おじさんは「古いまま」なのだ。
まぁ、それは仕方のない事なのかもしれない。
大人がウォレットチェーンをつけるなら

でも僕もウォレットチェーンが好きだから付けたい。
今の時代に30代•40代の男性がウォレットチェーンをつけるならデザイン選びがすべて。
ポイントは「主張しすぎない長すぎない」「素材で魅せる」
- 細めのシルバー925
- 静かに揺れるショートタイプ
- キーホルダー感覚でベルトループに短くつける
要は、威嚇ではなく余裕を見せるのが大人スタイル。
チェーンが主役ではなく、あくまで洋服に「馴染むアクセント」として使うのが良い。
ヴィンテージデニムにTシャツ、足元はブーツ。
そこに静かにチラッと腰に光るチェーン。
それぐらいのバランス感がちょうどいい。
海外では広まらないのか?
- アメリカではウォレットチェーンはあくまで「機能」だった。
- 財布をバッグに入れる文化が主流で、腰につける必要がなかった。
- ミニマルなスタイルが好まれるため、装飾としてのチェーンは敬遠されがち。
つまり、実用性がなくなった時点で終わった文化
一方、日本では「機能」を超えて「カルチャー」として残った。
この違いが、まさに日本のファッションの面白さでもある。
ウォレットチェーンは文化の残り香であり、アイデンティティ
ウォレットチェーンが日本で愛され続けるのは、単なる懐古ではない。
古着文化やアメカジを通して、日本人がディテールに魂を込める民族だからだ。
「自分のスタイルの一部」として受け入れている。
海外で廃れた文化を、ここまで昇華させてきた国は他にないんではないのか。
ウォレットチェーンは、たしかに今の若い子達からしたら時代遅れかもしれない。
でも、大人がカッコよく付ければ、日本人の美意識と職人気質が作り上げたカルチャーの象徴なると思う。
まとめ|大人としてのウォレットチェーン
ウォレットチェーンがヤンキーの象徴になり、今ではおじさんのアイテムと呼ばれ、
ダサいアイテムと呼ばれるようになってしまった。
でも、本当にダサいのは、時代が変わっても変わる事ができずに、今も当時と同じゴツくてイカつい派手な装飾付きのウォレットチェーンを付けている大人ではないだろうか。
時代が変わって、今の大人の自分に、ちゃんと合っているデザインのウォレットチェーンを付けていれば、僕はかっこいいと思っている。